これだから格闘技は面白い
今日のRIZIN、ジャイアントキリングと言っても差し支えない出来事が起きました。
RIZIN、ベラトールバンタム級王者の堀口恭司が朝倉海に1RKO負け。
気持ちの整理がつかないというか、呆然としてしまってる自分が居て。
とりあえず試合前の流れからこれからの行く末について妄想込みで書き散らかします。
1.試合前
1.1 マッチメイクについて
まずこのマッチアップとなった経緯ですが、単純に堀口の実績に伴う相手をRIZINがセット出来なかった、という点に尽きます。
ただ、運営としては堀口を大晦日まで温存するにはもったいない、堀口と誰か話題性のある選手との試合を組みたい、というとこで白羽の矢が立ったのが朝倉海。
今回は名古屋大会、地元出身の朝倉が組まれたのは驚きもないです。
ただ、この試合の戦前は圧倒的に堀口有利、朝倉には時期尚早というのが大方の予想だったと思います。ちなみに例に漏れず自分も堀口完勝という予想でした。
堀口のバンタム級でのパフォーマンスは国内では頭一つ抜けており、一方の朝倉は堀口が勝っているマネル・ケイプや、元谷友貴に完敗しているムン・ジェフンと互角の勝負をしており、世界でもトップに位置づけられる堀口を相手にするのは厳しいだろうと考えていました。
7月の大会でバンタム級の2試合が組まれていたように、RIZINが今本腰を入れているのは、世界に通用する"Kyoji Horiguchi" を更にアピールしていくこと。
RIZINは世界と張り合えるプロモーションとして、堀口恭司、那須川天心、浜崎朱加という武器を持っており、この3選手を筆頭にしてUFC、ONE、ベラトールといった巨大な団体に立ち向かっていくという画策だったように思われます。
那須川天心はどちらかというと国内への話題作り、かつキックかボクシングといった別路線に向かっており、対世界では若干弱さがあります。
浜崎朱加については、現時点でUFCやベラトールに階級が無く、年齢的も後がないためこちらも世界に売り出すという点では弱いです。
その点、堀口恭司は初の2プロモーションでの王者で北米屈指の団体のベルトを巻いたということもあり、対世界へのウェポンとしては強大なものがあります。
RIZINとしてはガンガン世間に対しても売り出していきたい選手です。
なので、どちらかというと今回の試合は堀口の顔見せの意味合いが強かったと思います。
1.2 調整過程について
堀口はアメリカン・トップ・チーム(通称ATT)にて調整を行い、試合直前に日本に帰国して試合をするというフロー。
今回は珍しく、日本で調整をしたみたいです。恐らく、RIZIN.17の挨拶以降は日本に滞在しています。
結果論にはなりますが、この調整過程にも少し歯車が狂うような何かがあったかのように思えます。
一方の朝倉は堀口対策かどうかはわかりませんが、ボクシングの出稽古に行ったりとこの試合に向けてしっかりと調整を行っています。
朝倉には兄の朝倉未来がいて、某格闘技雑誌の対談の際に軽くマススパーをしたとのこと。
そのスパーにおいていくつか弱点を見つけたと話していましたが、これは後述で詳しく説明します。
2.試合
2.1 試合展開
堀口、朝倉ともにオーソドックス。お互いに距離が離れているのはいつもの堀口の試合といったところ。
いつもの構えからフェイントをかける堀口、朝倉も若干動きを見せるが堀口は動じず。
堀口の右ローキックが空振り、距離を詰めて左膝を繰り出すも射程も合わず空振り。
ファーストコンタクト、堀口が踏み込んでワンツーを仕掛けたところで朝倉の右のカウンターが入る。堀口が後退し、朝倉が追っかけながら左膝を繰り出すもここも距離合わないが詰めてラッシュ。
堀口はフックで応戦するもダメージ深い、組んでも力が無く離されてしまう。
再三ラッシュで詰められて右フックをもろに喰らいダウン。
レフェリー止めて朝倉の1RKO勝ち。
2.2 朝倉陣営の作戦について
恐らくですが、踏み込んできたところを右で合わせること、右のフックに対して身長差を活かした左膝のテンカオでボディあるいは顔面を捉える作戦と思われます。
堀口はフェイントをかけつつ、相手がフェイントに反応したのを見計らって一発目で一旦押して次のフックで効かせるコンビネーションを持っています。
これについては、那須川天心が下記の動画で語っています。
【番組】RIZIN CONFESSIONS #23 - YouTube
理屈で言えば簡単なことですし、癖であり弱点だなと考えることも可能です。
ただし、MMA選手の打撃レベルでこれを攻略出来る選手は今までいませんでした。
堀口のフェイント、スピード、目の良さ、打撃における必要不可欠な才能やスキルに太刀打ち出来る選手はほとんどいません。
また、組まれてその後の展開も含めるとなると普通の選手であれば、この動作に対して一発目にカウンターを入れようという意識はないと思いますが朝倉は違いました。
ものの見事に機会を逃さずワンパンチで効かせ、フィニッシュまで持っていきました。
これについては思い切りの良さと朝倉の目の良さや反応の良さといった天性のポテンシャルでこそ出来る芸当です。
カウンターというのはある程度相手が仕掛けてきたところに対して行うアクションであるため、博打要素も多く、ある意味、気負う物が無い者の強みが存分に発揮されたといったところでしょうか。
3.今後の展開について
3.1 朝倉海の場合
朝倉としては間髪入れずにタイトルマッチに挑戦したいでしょう。
仮に査定マッチとして他の選手に負けた場合、堀口とのタイトルマッチが少しトーンダウンしてしまうためです。
何より、石渡、扇久保、元谷、佐々木、ビクターといったメンバーに放り込まれた時にかなり厳しい展開が予想されます。
朝倉に決定権が委ねられているため、早くて大阪大会、遅くても大晦日のタイトルマッチを所望すると考えます。
3.2 堀口恭司の場合
リマッチを優先するでしょう。
10月の大阪大会を直訴する可能性もありますが、ここはダメージを抜いてほしいです。
ベラトール対抗戦などもあり、もしかしたらそちらを優先する可能性もあると思われます。
3.3 RIZIN運営の場合
どちらにも取れるのですが、仮に12/29に行われるベラトール対抗戦に堀口の出場が内定していた場合、かなりキツイです。
10月で即リマッチさせて、年末に間に合わせる可能性もあります。
とはいえ新たなスター候補も誕生し、プロモーションとしての手腕が問われる状況となりました。
4.個人的な感想
コールドウェル戦から思っていたことなのですが、堀口のベストな階級はフライ級です。バンタム級では少し小さいように思えます。
ただ、国内に相手がいないことを鑑みてのチョイスと思われるため何とも言えませんが...
ただ、朝倉と再戦したら堀口があっさり勝つように思えます。
向こうの戦術も理解してるでしょうし、魅せるような試合をしなければ組んであっさり寝技に持ち込むと思います。
テイクダウン後の攻防は堀口に大きく分があります。
朝倉の腰は強いと言われていますが、組んだ際の攻防に関していうと堀口は並の選手とはレベルが違います。寝ても勝てるならとっくにコールドウェルや扇久保に負けてると思いますし。
朝倉についてはあっぱれの一言です。ワンチャンスをものにするのはアスリートとして素晴らしいことです。
この試合結果によって、さらに過酷な道を突き進むことになると思います。
思い切って、練習環境を変えたりするのもありなんじゃないかなと...
ここで悔しいのは石渡、扇久保でしょうか。
恐らく朝倉になら全然勝てるのに、と思っているでしょう。
ここを落としたのは堀口はなかなかに罪深いですが、ファンとしては混沌とした状況を色んな想像を膨らませながら日々を過ごせる事が出来るのはとても楽しいです。
GSPもマット・セラに、ミルコもランデルマンにワンパンチで負けたように格闘技には想像もつかないような出来事が起きます。
これが非情でもあり、醍醐味なんですよねえ。
人生もそうです。予定調和の連続じゃなく、何かが起こる事だってあるんです。
負けた時は放心状態でしたが、文にまとめてると自分の中で整理出来始めました。
堀口も朝倉兄弟も今後が楽しみですなあ。